前線でプレッシャーをかけ続ける意味

心」についてです。 115631  

間合いに関する研究

元埼玉大学教育学部教授、大保木輝夫先生は「間合い」に対して大変興味深い、実験を行っています。 参考文献:大保木輝雄「武芸心法論についての一考察」 埼玉大学紀要 その実験とは、お互い道場の端(約 15m)に立ってなんとなく見つめあい、自分はその位置に止まって相手に近づいてもらう。 そして、相手が自分の気持ちに変化を感じたら止まってもらう。これを剣道の経験者、未経験者で実施しました。  

九歩の間合い

結果は大多数の人が「九歩の間合」で止まった。 さらに、その距離から近づいてもらい、また気持ちが変わった時点で止まってもらうと、一歩踏み込んで手を伸ばすとお互いの身体に屈く距離(一足一刀の間合い)であった。 さらに相手に近づいてもらうと、その場から直接身体に手が屈く距離(攻防の間合い)で止まってしまうのです。 9歩の間合い 上記の実験から大保木先生は「自分と相手の距離の遠近は、自分の心と体繋ぐ感覚 (気持ち)に変化をもたらし、個人差はあるが、三つの地点で気持ちに変化が起こっていることが見られた」とおっしゃっています。   「九歩の間合い」相手と自分が特別な関係をもったと意識する距離(知覚距離) 「一足一刀の間合い」意識と、体の本能が混在して働きだす距離 (情動距離) 「攻防の間合い」本能的反射的に体が動き出してしまう距離(反射距離)   「間」が変化する事によって起こる精神的緊張。それによる混乱や強者に対して我知らず退いてしまうことは、「心と体に変化が起こり自分の心と体のバランスが崩されることから起こる」と述べています。 さらに、調子の良いときは「相手の動きが良く見え、心・足・手が一致して働き、心と体のバランスが乱される事なく力が発揮できる」とおっしゃっています。 参考文献:柔道における間合いの実態  

 サッカーで考えてみましょう

「九歩の間合い」この間合いに入れば、相手に何らかの精神的なプレッシャーはかけられるという事です。 マインツの岡崎選手が前線で、遠くの相手DFやGKが持っているボールを追いかけているシーンをよく目にしませんか? 「それは無理だろう・・頑張るなぁ~」って思うような遠くのボール。   ボールまで届くか、届かないかではなくて「九歩間合い」まで届くか届かないかでみてみると見方が変わるかもしれません。 繰り返し前線でボールを追いかけると言う事は、相手の「九歩間合い」に繰り返し侵入する事で、ストレスを与え続ける事になります。   絶えず与えられた精神的な緊張は混乱を招き、相手のミスを誘発する可能性が高くなります。そのミスを逃さず得点につなげる、岡崎選手が世界で活躍している理由の1つだと思います。   岡崎選手や永井選手が「九歩の間合い」を意識してされているかは分かりませんが、前線でプレッシャーをかけ続ける事は重要である事は間違いないでしょう。 子供たちにもやみくもに「最後まで追いかけろ!」というのではなく、追いかける意味を説明する事は必要かもしれませんね。(低学年にはちょっと難しいけど・・・)

間合いについて3回にわたって書いてきました。楽しんでいただけたでしょうか?私はサッカーが未経験なのでこうしていろんな競技のよいところをサッカーに取り入れられないか?という目線でものを読んでます。 もし、私にサッカーの経験があれば「それは、ちょっとサッカーではね・・」と経験があるが故の壁を作っていたかもしれません。 こんな、素人指導者の意見にも少しだけ耳を傾けて頂ければ幸いです。   そろそろ、本業のスポーツ障害についてまた書こうと思っています。  

参考記事

http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/1vs1kisokusei http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/utikomigeiko http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/maai   この記事を少しでも気に入って頂けたなら、シェアして頂けると力になります。
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前線でプレッシャーをかけ続ける意味” に対して4件のコメントがあります。

  1. Stanley より:

    プレッシングサッカーの話ですね。子どもたちにはただファーストディフエンスとして直線的にボールに向かっていくのではなく、ワンサイドカットを意図しながらプレスしていくことを伝えたいと思います。積極的なディフェンスを前線からしていくなら、ボールを奪うという目的だけでなく後方の味方のためにどうプレスしていくかを理解させること、そして後方の選手にはその味方の動きをしっかり理解させてねらいをしぼることをさせることで戦術的な動きになると思います。サッカーでは基本的な戦術ですが、小学生にそれを理解させるにはくり返しくり返し伝えていくことが必要ですね、理解する選手はすぐできるようになるのですが、一人では意味がありませんから。チームの全体に浸透させていくのがどれだけ大変か。足が速い、ボール扱いがうまいだけでなくそうした個人戦術の理解度がチーム力に大きく影響してきますね。

    1. maty3 より:

      Stanley様いつもコメントありがとうございます!
      「ワンサイドカットを意図しながらプレスする」これでこの記事がグッと締まりました。
      おっしゃる通り、いくら相手にストレスを与える為といっても「9歩の間合い」にただ猪突猛進で近づいて行くだけでは無駄ですね。
      なかなか、子供たちに伝える事は難しいですが繰り返し説明する努力を続けたいと思います。
      いつも、的確なご指導ありがとうございます!

  2. 永見 哲 より:

    剣道が出てきたんで、コメントさせていただきます
    「間合い」は全ての格闘技について、とても重要な概念ですが
    サッカーも同様だと思ってました。
    ブログでは、遠い間合いと心理的な影響について書かれています。

    息子が今、DFですので、ボール奪取に観点をもってまして、
    最終的には剣道での一刀足の間合い=ワンアクションでボールを奪取できる間合い
    に詰められれば、DF側が優位だけど、間合いを詰める動きを読まれると
    逆をついて、攻撃側が優位かなと思ってます。

    1. maty3 より:

      コメントありがとうございます。

      おっしゃる通り、一足一刀の間合いに入るまでに勝負は決まっている事が多いですよね。

      とくに子供たちのサッカーをみていると、経験の浅い子供ほどその差がはっきりと見られます。

      剣道とサッカー、異なる視点でスポーツを見る事は非常に面白いですよね。

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