サッカーにおける1対1の攻防は試合の結果を大きく左右します。1対1に強い子を育てたい!その為には足元の技術だけでなく、相手との駆け引きの上手い選手になって欲しい!
そんなきっかけから「間合い」について調べはじめ、興味深いお話をいくつか見つけたので紹介したいと思います。
剣道の間合いについて書かれたものですが、サッカーの1vs1の場面の想像しながら、読んで頂くとイメージしやすいと思います。
2者間の攻防に潜む規則性
相手との駆け引きがあり、素早い動きの繰り返すこの2者間の攻防。非常に複雑にみえるこの動きが、
わずか6つのパターンで構成されているというお話をご存知でしょうか?
名古屋大学の山本裕二教授が研究された、「Joint Action Syntax in Japanese Martial Arts(和名:2者間の攻防に潜む規則性)」という論文にはこんな事が書かれています。
ボクシングや剣道などの2者が競う対人競技では
間合いの駆け引きが勝負の決め手となる。
対人競技において全く同じ動きが再現される事はなく、瞬時の判断と実行が要求される。
「ヒトはなぜこのような素早い判断に伴う行動がとれるのか?」この疑問を明らかにする目的で研究が行われました。
また、論文の中では
上手い人と下手な人との動きの違いについても述べられています。
研究の内容
研究は大学生の剣道選手、熟練者と非熟練者(控え選手)それぞれ6名に5分間の剣道の試合をしてもらい、2者間の距離と速度を求め比較されました。
そこから得られた結果は
「2者間の攻防の基本パターンは6個であり、これらのパターンを切り替える事で複雑に見える、無数の動きを生み出している」という事でした。
その6つのパターンを私なりに解釈してみました。
a 徐々にスピードを緩め、お互いの距離が近づいて行く
「ジリジリとお互いの距離を詰め合う」
b 動きが速くなったり、遅くなったり、距離が近づいたり、離れたりしながら一定の距離に近づく。
「aよりも積極的にお互いが間合いを詰めようと窺っている」
C 動きが徐々にゆっくりとなり、距離が縮まったままになる
「お互いが体を寄せて競り合っている(鍔迫り合い)」
d 動きが速くなったり、遅くなったりしながら、距離が近づいたり、離れたりしながら一定の距離から遠ざかっていく。
「お互いに警戒し、勝負の間合いに入れず距離を取っている」
e 一気に速度も距離も縮まるが、その後遠ざかっていく
「お互いに一気に間を詰めて攻め合ったが、攻めきれず離れていく」
f 激しいせめぎ合いの後、ゆっくりと離れ間をとり警戒しあう距離に戻る
「体を寄せて攻め合ったが、攻めきれず離れてもう一度間を取る」
以上が2者間の攻防で見られる6つのパターンです。
複雑に見える2者間の攻防は、この6つのパターンが繰り返し切り替わる事によって生じているのです。
少し難しいですが、サッカーの1vs1で考えると、「ジリジリと様子をうかがう瞬間」「一気に仕掛けたが、相手が反応したので戻る」など、想像がし易くなるのではないでしょうか?
熟練者と非熟練者との違い
この6つのパターンは
「遠い間合いでの素早い攻防」「近い間合いでのゆっくりした攻防」
この2つの状態を作るという目的で切り替わります。
そして
熟練者ほど「遠い間合いでの素早い攻防」を好み、非熟練者ほど「近い間合いでゆっくりした攻防」を好むという結果でした。
私なりの解釈で、熟練者が「遠い間合い」を好む理由を考えます。
熟練者は相手の体の動き(わずかな重心の移動、姿勢の変化)、心の変化(表情の変化)を遠い間合いから見抜いて、相手が攻めようとした瞬間(起り頭)を的確に捉えることができるからではないでしょうか?
サッカーに置き換えても、未経験者はボールに突っ込んで、体を寄せてボールを取ろうとします。そこを経験者にあっさりかわされてしまう。
突っ込んできた姿勢、目線で次の動作が予測できてしまう。だから遠い間合いを取って余裕をもってかわす事ができるのだと考えます。
しかし、初心者に最初から「遠い間合いを取れ!」と言っても、相手の動きを予測できなければ結果は同じです。
以前に
「1対1練習 お父さんの役割は重要」でも書きましたが、やはり最初は近い間合いでたくさんチャレンジして、自分の得意な間合いを覚える必要があるのだと思います。
がむしゃらに突っ込んで来るだけだったお子さんが、ボールを持ったお父さんと距離を取った時。
それはお子さんが「成長」した証かもしれませんね。
※距離と速度の解析はリターンマップという方法でされています。
こちらので丁寧に説明されてます参考にしてください「わかればこんなにおもしろい!剣道観戦」
図が見えにくい時はこちらを参考にしてください出典:二者間の攻防に潜む規則性
参考記事
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/maai
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/utikomigeiko
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/9honomaai
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