今日はジュニアユースの子供たちと一緒に「アンプティーサッカー」を体験したお話です。
アンプティーサッカーとは?
アンプティーサッカーを知らない方の為に、簡単にアンプティーサッカーについて説明しておきます。
アンプティサッカー(amputee soccer )とは、怪我や病気などで腕や足を切断した方がプレーするサッカーです。
もともとはアメリカ軍が負傷兵のリハビリの一環として取り入れた事が始まりで、現在では世界中にプレイヤーがいるスポーツです。
日本での歴史は浅く2008年に元アンプティサッカーブラジル代表の日系3世エンヒーキ・松茂良・ジーアスが来日したことをきっかけに普及活動が開始されました。
アンプティーサッカーのルール
・7人制競技。フィールドプレーヤー6名とゴールキーパーの計7名。
・フィールドプレーヤーは足の切断者、ゴールキーパーは腕の切断者が担当します。
・切断側の手足を使用する事は禁止されています。
・フィールドプレーヤーは移動のために杖を使用しますが、杖でのボール操作は禁止
(故意に触れた場合はハンドになります)
・オフサイドはなし。
・選手交代は何回でも可能。
・国際大会での試合時間は前後半25分の、計50分間。
この25分を甘くみてはいけません…
腕と片足で移動する25分間、しかも上下の激しい移動にスピードが要求されます。
私は5分体験しただけで腕が震えました…。
雨男の本領発揮
体験会の当日は朝から
豪雨。
「せっかく子供たちに貴重な体験をしてもらうのに、なぜ雨なんだ!」
と雨男の自分を恨みましたが、雨雲は薄くなっていく予報なので決行です。
会場まではバスで1時間半、バスの中では私から手足の切断についての簡単な説明と障害者サッカーに関するDVDを見ながら向かいました。
子供達は真剣に話を聞いてくれて、DVDもしっかり観てくれました。
祈り?怒り?が通じたのか、会場に到着すると雨は小降りになってくれました。
はじめてのアンプティーサッカー
会場では雨の中、コーチをはじめチームの皆さんが準備をして待っていてくれました。
チームの皆さんの雰囲気で、私たちがすごく
歓迎されている事が伝わります
。
簡単な自己紹介のあと、障害者サッカーについての講義。
障害者スポーツの歴史から現在の状況まで、中学生に分かるように丁寧に説明してくださりました。
実際に障害者スポーツに関わっている方から、話が聞ける事も子供達には貴重な体験です。
体験会に興奮する子供たち
初めて見る「杖」、不思議そうに2本の杖を使って動き始めますがフラフラ
ボールはまともに蹴れません、杖を使わずに片足ケンケンで走り回る子もいます。
しばらく自由に試してから、アンプティーサッカーの選手に杖を使った走り方、ボールの蹴り方の手ほどきを受けました。
すると、子供たちは少しづつと走れるようになって、ボールもなんとか蹴れるようなってきました。
さすがはアンプティーサッカー選手
子供達も杖と片足でボールを蹴れるようになってくるのですが、選手達と比べてそのボールの質は全然違います。
選手のみなさんのは、体全体を杖で支え振り子のように強くボールを蹴ります。
分かりやすくイメージにすると、こんな感じです。
しっかりと体重を乗せたシュートは中学生のGKが止められないほどの威力です。
私もやってみましたが、ふんわりとした意図しないループシュートが限界でした。
杖の先まで神経が通ってるんだろうなぁ~と感心するばかりです。
トレーニングマッチ 前半
体験会が終わったら、まずはお互いに杖を使った試合からStart!
中学生は片足ケンケン使ってスピードで勝負する、ルール無用の両足を使う、参加者が多い事も利用してどんどん交代して体力勝負で勝ちに行きます。
しかし、それを圧倒的な技術でかわすアンプティーの選手たち。
杖の幅まで計算した、スペースを狙うスルーパスは見事!競技として迫力があり、見ていてすごく面白い。
結果は当然アンプティーチームの勝利です。
慣れないサッカーに中学生たちは25分でヘロヘロになってました。
トレーニングマッチ 後半
後半は
アンプティーサッカーVS ガチンコ中学生です。
後半の開始前、私は「試合の条件はどうしましょう?人数を調整しましょうか?」と尋ねました。
それに対して選手から返ってきた答えは
「全力で戦って欲しい、左右にDFを思い切り振って動かしてくれ」
「全国で戦うチームはそうやってスピードのあるサッカーをしてるから、経験させたい」
この一言で、
何のために私たちがここへ来たのか?が充分に理解できました。
貴重な体験をさせてもらったお礼はサッカーで返す!
中学生にしっかり伝えました
「遠慮なし、本気で戦ってこい」
スピードに勝る中学生、選手たちの望み通りにサイドから展開しDFを振り回します。
中学生の怒涛の攻撃を全員守備で凌ぐ選手たち。
何点取られても前を向いて全力でプレーを続ける姿からは
「勝ちたい」「強くなりたい」気持ちが溢れていました。
結果は中学生の勝利です。
しかし、選手とコーチの情熱は中学生を遥かに凌いでいました。
選手たちは本気でぶつかって、「強くなりたい」気持ちを全力で子供たちに伝えてくれました。
今すぐには分からなくても、将来、子供たちが壁にぶつかった時、それを乗り越える力になるすばらしい経験をさせて頂きました。
大きく見えた選手たち
短い時間でしたが、心が震える体験をさせて頂きました。
この体験を通して私が感じた事は、私が病院でみる四肢切断の患者様より選手のみなさんが
大きく見えた事
自信を持って、情熱を燃やしサッカーに取り組む選手として、
尊敬し、
自分よりも人として大きな存在だと感じたからでしょう。
もちろん、病院で見る患者様を見下している訳でありません
障害を受け入れる過程で苦しむ患者様と、
障害を受け入れ前に向かう人にこんなにも差があるのか…
と考えさせられるばかりでした。
人を変えるスポーツの力に驚き、
自分に何ができるのか?改めて考えていこうと思います。
素晴らしい経験をさせて頂いた、チームの皆さんに心から感謝しています。
次週は私がいつも指導している小学生たちが体験に伺います、子供たちが何を感じてくれるか、すごく楽しみです。
「雨だけは降りませんように」
参考記事
アンプティーサッカー体験 小学生編です
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/ampty2
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/amputee
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/burasaka
おすすめの本
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