先日のニュースからピックアップします。
指導者の行動が問題となり、最終的には監督を辞任するという結果になりました。
ニュースで聞くと「そんなことあるの?」「信じられない」と思うかも知れませんが
少年スポーツの指導現場ではまだまだ、当たり前にあると私は思っています。
ミスした子どもを全裸でランニングをさせた監督が辞任
徳島県阿南市の少年野球チームで起こった体罰に関するニュースです。
40歳代の男性監督が、練習中にミスをした小学3~5年の選手5人に、罰として全裸でランニングをさせていたことがわかった。
市内の小学校で練習中、「キャッチボールでミスをしたら裸で走る」と提案。
捕球し損なうなどした男児5人が裸になり、グラウンドを1~2周走ったという。
その後、保護者の中から苦情が寄せられ、監督は児童や保護者に謝罪し辞任した。
元監督は「軽率な気持ちで提案してしまった。選手や保護者に申し訳ない」と話した。
みなさんこれを聞いてどう思いますか?
「ありえない」「信じられない」「許せない」?「またか…」?
それとも「やばい!」ですか?
体罰ってどこからが体罰なの?
裸で走らせる行為は体罰と分かる行為なんですが、でも体罰ってどこからが体罰なのか?よく分かりません。
「言う事を聞かないので、作戦ボードで頭を叩く」
「試合に負けたから走らせる」
「怒って暴れるので地面に抑え込む」
「遅刻してきたから、練習に入れない」
「試合中に大きな声で罵倒する」
「みんなの前でミスを笑いものにする」
「試合に出さない」
具体的な例を挙げてもどれが体罰か?私も判断できません。
児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方
教員等が児童生徒に対して行った懲戒の行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。
出典:文部科学省
このように、ここからが体罰という明確な基準はありません。
指導する側、される側どちらの意見も聞かなければならないので、明確な基準をつくる事は難しいですね。
その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る、蹴る等)、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合は、体罰に該当する。
出典:文部科学省
この文章を読むと、先ほど挙げた例
「言う事を聞かないので、作戦ボードで頭を叩く」、「試合に負けたから走らせる」
は体罰に当たると考えられます。
言葉も同じく「試合中に大きな声で罵倒する」も体罰と考えられます、しかし
児童生徒に対する有形力(目に見える物理的な力)の行使により行われた懲戒は、その一切が体罰として許されないというものではなく、「生徒の心身の発達に応じて慎重な教育上の配慮のもとに行うべきであり、このような配慮のもとに行われる限りにおいては、状況に応じ一定の限度内で懲戒のための有形力の行使が許容される」としたもの(昭和60年2月22日浦和地裁判決)などがある。
出典:文部科学省
文章が硬くて分かりにくいですが、すべての行為が体罰にあたると言うわけではないという事です。
「試合に負けた後走らせる」
負けにイライラして、「走って来い!」と感情的にいつまでも罰として走らせるのは体罰です。
指導者が後半から明らかに走り負け、体力で負けたと感じた試合。
子どもたちに、言葉で体力で負けた事を伝え、スパイクをトレーニングシューズに履き替えさせて、時間や距離を決めて負荷をかける。
それなら体罰にはならないでしょう。
試合中に大きな声で選手にアドバイスを送る事も、作戦を指示することは当然あります。
「バカ!なにやってんの!そうじゃないだろ!!!」
「いい加減にしろ!!周りが見えてないんだよお前は!!」
これはアドバイスでも、作戦の指示でもないので繰り返し行われ、子供が委縮するような環境であれば体罰と言えるかもしれません。
単に授業に遅刻したこと、授業中学習を怠けたこと等を理由として、児童生徒を教室に入れず又は教室から退去させ、指導を行わないままに放置することは、義務教育における懲戒の手段としては許されない。
授業中、児童生徒を教室内に入れず又は教室から退去させる場合であっても、当該授業の間、その児童生徒のために当該授業に代わる指導が別途行われるのであれば、懲戒の手段としてこれを行うことは差し支えない。
児童生徒が学習を怠り、喧騒その他の行為により他の児童生徒の学習を妨げるような場合には、他の児童生徒の学習上の妨害を排除し教室内の秩序を維持するため、必要な間、やむを得ず教室外に退去させることは懲戒に当たらず、教育上必要な措置として差し支えない。
出典:文部科学省
これも、スポーツの指導現場でもあり得る話しです。
練習に遅刻してきたので、罰として練習にいれず走らせる。
練習中にふざけて周りの子供たちにも影響が出るので練習から出した。
試合に一切出さない
こんな場面は残念ながら、当たり前のようにあるかもしれません。
これも練習の中に入れない、試合に出さないというだけでは、状況によっては体罰になりうるのかもしれません。
練習から外した後の子供へのサポート、すべての子供が試合に参加できるような環境作りも含めて考える事が重要です。
少年スポーツの現状
サッカー協会に届けられている暴力に関する報告は年間に70件程あるそうです。
体罰に厳しくなった世の中でこの報告が、以前と比較しても減っているかというとそうでもありません。
私も指導者になってから、子供たちへの暴力の場面を何度か目にした事もあります。
自分自身も時には厳しく子ども達を叱ることもあるので、捉え方によっては体罰と捉えるかもしれないといつも自分を戒めながら行動しています。
スポーツは楽しむ為のものですが、同時に勝負の世界です「
時には厳しい」こともあって当然です。
ただ、厳しさの中に
指導者の怒りの感情が含まれないようにしなければなりません。
今回の件での「裸で走らせる」行為は、明らかに「
行き過ぎた指導」だと思います。
私も子どもたちとの遊びの中で
「次にミスしたら、お尻で名前書くね!」と子ども達と遊んだことが何度もあります。
でも子供が「楽しい」と思っていなかったら、これも体罰になるのかも知れません。
この件について、元監督さんが「
軽率な気持ちで提案してしまった」と言っているように、自分では体罰なんてとんでもないと思っていても、問題を起してしまう可能性がある事を理解しておきましょう。
体罰を苦にして、スポーツを辞めてしまう、心の問題を抱えてしまう、命を失うような痛ましい事も起きています。
今回のこのニュースを読んで、指導者は自分の発言や行動にすごく
影響力があること、同時に
強制力もあることを、普段の指導から注意して子ども達と接するようしなければいけないなと考えさせられました。
参考記事
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/post-2771
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/words-of-leaders
おすすめの本
褒めるだけじゃない、子どもの心とどう接するか勉強になった本です。
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