心臓震盪(心臓しんとう)とは?スポーツ現場で命を守る為に知っておくべき事

  心臓震盪(心臓しんとう)という言葉をご存知ですか? 脳しんとうは聞いたことがあるかもしれませんが、心臓しんとうはあまり耳馴染みがない言葉ではないでしょうか? スポーツの現場で起こる「突然死」の原因の1つに心臓しんとうがあります。 できれば遭遇したくないことですが、万が一子どものスポーツの指導中や遊びの中で心臓しんとうが起こった時に適切な対応ができるように、心臓しんとうに対する知識を学んでおきましょう。  

心臓震盪(心臓しんとう)とは?

心臓しんとうは胸に何らかの衝撃を受け、その衝撃で心臓の動きが大きく乱れ(不整脈)そのまま意識を失ってしまいます。 適切な対応がとられなければ、そのまま心臓は停止し「突然死」に至ります。  

心臓震盪の発生に関わる3つの要素

心臓しんとうは「衝撃が当たる場所」「強さ」「タイミング」の3 つの要素が重なりあった時に起こります。 心臓しんとう  

心臓震盪を引き起こす衝撃を受ける場所

心臓の真上に衝撃を受けると心臓しんとうを起こす可能性があります。 心臓から外れた場所では心臓しんとうは起こりません。 心臓しんとう スポーツ 少し難しい話ですが、実験では心臓が血液を送り出す重要な場所「心室」に衝撃が加わると、心室細動・心室頻拍などの命に関わる不整脈を引き起こすといわれています。  

心臓震盪を引き起こす衝撃のタイミング

衝撃を胸に受ければいつでも心臓しんとうが起こる訳ではありません。 心臓が1回動く時に一瞬だけ、心臓しんとうを起こしやすい瞬間があります。 心臓しんとう 心電図   心電図の画像なので難しいですが、上の図は心臓がポンプのように「ギュッ」と縮んで血液を体中に送りだし、元にもどるまでの1回の動きを表した心電図です。 「P」から始まって「T」までが1回の心臓の動きですが 「T」の頂上付近の手前、心臓が縮んだ後に元の大きさに戻ろうとする瞬間の「0.02秒」に心臓しんとうを引き起こすタイミングがあります。   わずか0.02秒のタイミングですが、動物実験ではこの瞬間に心臓に刺激を与えることで高確率で不整脈が引き起こされたと報告されています。  

心臓震盪を引き起こす衝撃の強さ

心臓しんとうを引き起こす衝撃の強さは弱くても強すぎても起こらないといわれています。   打撲の傷跡が残らない程度の強さでも「場所」と「タイミング」が悪ければ心臓しんとうを引き起こす可能性があります。 実験の結果では時速64kmの衝撃が最も心臓の圧を高め(心室内圧の上昇)、不整脈を引き起こす強さだと報告されています。   つまり心臓しんとうは 「心臓が1回拍動する0.02秒の一瞬に時速64kmの強さの衝撃を心臓の真上に受ける」 と不整脈を誘発し、心臓しんとうになる可能性が高いと考えられています。  

子供に多い心臓震盪

心臓しんとうは誰でも心臓に加わる衝撃の「場所」「タイミング」「強さ」の条件が揃えば起こる可能性がありますが 特に子どもは胸の骨(胸郭)が柔らかく心臓へ衝撃を伝えやすいので、小学生、中学生のスポーツ活動中に多く発症すると言われています。   競技別でみると特に野球で心臓しんとうが多いのですが、子どもの投球や打球の速さが時速64km前後であることが多い原因だと考えられています。 しかし、サッカーやバスケットボールでもボールが胸に当たって心臓しんとうを引き起こしたという報告もあり、身体の接触プレーで肘が胸に衝突するなどで心臓しんとうになる可能性も充分に考えられます。  

フットサルの試合中に起こった心臓震盪

これは2015年5月4日に開催された「F-CHANNEL Pivo! Champions Cup 2015」の試合中に起こった心臓しんとうの事例です。 関東フットサルリーグ所属クラブ・fcmmの田中奨選手は、自陣ゴール前でスライディングでシュートブロックに行ったところ、シュートが心臓に直撃 起き上がって2、3歩歩いたところで前のめりに意識をなくしました。 意識を失った田中選手ですが、チームのスタッフとして帯同していた女性トレーナーの青山さんの迅速で適切な救命活動により田中選手は意識を取り戻す事ができました。 参考:FUTSAL EDGE  

心臓震盪が起こったら

もし目の前で心臓しんとうが起こったら迅速で適切な救命活動が必要です。 心臓しんとうは前述の通り、心臓に加えられた衝撃により「命に影響する不整脈」が起こっている事が原因です。 その不整脈は「心室細動(しんしつさいどう)」「心室頻拍(しんしつひんぱく)」など心臓が痙攣する異常な細かい動き「細動(さいどう)」が原因です。 その「細動」を取り除く機械が日本語で「除細動器」、耳馴染みのある「AED」です。 胸へ衝撃を受けた直後に、意識を失い脈が確認できない心臓が停止している状態であれば、迷うことなくAEDを使用しなければなりません。 心肺停止は救命からの時間が長ければ長いほど生存率は低くなり、命が助かったとしても重篤な後遺障害を残す可能性があります。   先ほどのフットサルの事例で田中選手が再びフットサルができるようになったのは、現場にいる人間が迅速な救命処置ができたからです。   心肺停止状態を少しでも短くする為に、スポーツの指導者はこのような事態に対応できるよう、救命の処置の講習を受けるなど非常事態に備えておくことが非常に重要です。   http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/aed  

まとめ

心臓しんとうは 「タイミング」:心臓が1回拍動する0.02秒の一瞬 「強さ」:野球のボールで時速64kmの強さの衝撃 「場所」:心臓の真上 この3つの要素が重なり合った時に、引き起こされる可能性があります。   特に子どもは胸郭が柔らかく、スポーツ活動中の子供に心臓しんとうが起こる可能性が高いと言われています。 心臓しんとうが目の前で起こった時は「AED(除細動器)」で適切な救命活動を迅速に行うことによって生存率を高めることが可能です。 スポーツの指導者は心臓しんとうに対する知識を持って、緊急の事態に備えることが子供の命を守るために重要です。   以上、心臓しんとうについて書いてきました。 できれば遭遇したくないと思うような事かもしれませんが、有事の時に備えて大切な知識なので、共有して頂きたいと思って書きました。 子ども達の命を守る為に一緒に頑張りましょう!!  

参考情報

若年者の突然死 心臓震盪」 輿水 健治 蘇生 Vol. 28 (2009) No. 2    ]]>

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