「肉離れ(にくばなれ)」よく聞く名前ですが、実際のところ「肉離れってなに?」
と聞かれると
「筋肉が離れる・・・?」「骨と肉が離れる?」「筋肉が切れる?」
曖昧な答えになってしまうのではないでしょうか?
肉離れはスポーツの現場では「捻挫(ねんざ)」に次いで多い、非常によく遭遇するスポーツ外傷の一つです。
今日はその「肉離れ」について、掘り下げてみたいと思います。
肉離れとは?
肉離れはスポーツの際に起こる怪我の中でも頻度が高く、スポーツ種目を問わずよく起こります。
「肉離れ」は正式には「筋挫傷」と呼ばれます。
筋挫傷には打撲など直接的な力が加わって起こるものと、
筋肉に急激に力が入る事によって筋肉が切れてしまうものがあります。
一般的に肉離れと言われるものは、筋肉に急激な力が入って切れてしまう筋挫傷の俗称です。
運動不足のお父さんが運動会で急に「ハッスル」して肉離れを起こす、そんな話を耳にした事があるかもしれませんが
肉離れは常にトレーニングをしている、高いレベルの競技者や子供でも起こる可能性が充分にあります。
力を入れたまま伸ばす時に切れる
筋肉はそう簡単に切れるものではありませんが、柔軟性が不足した筋肉に大きな負荷がかかり過ぎると切れてしまいます。
どんな時に切れるのか?
イメージしやすいように、簡単に下の上腕二頭筋(力こぶ)のトレーニングの写真で説明すると、ダンベルを持ち上げる時ではなく、重さをこらえながら肘を伸ばすとき。
筋肉に力が入っているが、肘を伸ばす方向に動かす時に切れることが多い(遠心性収縮)。
この筋肉の動きは体を動かす時には常に起こる動きです。
特にランニング動作では、足が地面に着く直前(遊脚期後期)に太ももの裏の筋肉が引き延ばされて切れることが多いと言われています。
肉離れがよく起こる場所は?
①ボルダリングなどで体を腕で持ち上げる時の腕の後ろ(上腕三頭筋)
③サッカーのシュートを打つ時の太ももの前(大腿直筋)
④ランニングの時の太ももの後ろ(大腿二頭筋 長頭)
⑤大きく方向転換などをするカッティング動作でのふくらはぎ(腓腹筋内側頭)
など筋肉を動かせばどこでも肉離れを起こす可能性があるのですが、スポーツ全般に必要な脚の動きで太ももやふくらはぎに肉離れを起こす事が多く見られます。
筋肉のどこが切れるのか?
肉離れは多くの場合、筋肉が骨に付着するところでおこります。
下の図で説明すると、ちょうど赤と黄色の境目ぐらい(筋腱移行部)か黄色の部分先(付着部)で筋肉が切れてしまうことが多いそうです。
肉離れはいつ起こるのか?
肉離れを予防する為には、いつ肉離れが起こりやすいのかを知っておくことも重要です。
肉離れが起こりやすいとされるのは、まずは運動開始直後。
充分なウォーミングアップをしないで、筋肉の温度が低く筋肉に柔軟性がない状態で一気に全力を出すような動きでは、筋肉がその負荷に耐えられず肉離れを起こす可能性があります。
しかし、ウォーミングアップを充分にしていても肉離れは起こる可能性があります。
とくに疲労が影響する運動終了の直前に肉離れを起こす危険性が高まります。
サッカーのプレミアリーグにおける傷害調査報告によると,試合の前半・後半の終了間際にハムストリングス損傷が多く発生したと報告している.
また,Dadebo らのプロサッカーチームにおける調査報告によると,ハムストリングス肉離れの3 分の2 が練習や試合の後半で発生している
出典:ハムストリングス肉離れに関する研究―伸張性収縮とハムストリングスの機能―
筋肉の疲労は肉離れを引き起こす原因になります、練習の後半や試合の終了間際の怪我には注意が必要ですね。
肉離れは再発しやすい
肉離れは再発をしやすい怪我だと言われています。
肉離れを起こしたことのある筋肉は、切れた筋肉が治っていく過程で伸びにくい組織(瘢痕組織)に変わることがあります。
分かりやすく言えば火傷(やけど)の後の皮膚のような感じです。
その伸びにくい組織の影響で筋肉の長さが充分に足りず、激しい動きの中で再び切れてしまうことがあります。
その他にも、筋肉のバランス
例えば太ももの前と後ろで極端にどちらかの筋力が強過ぎる、弱すぎる人は肉離れを起こしやすいと言われています。
肉離れを起こすと、その期間は切れた筋肉をトレーニングすることはできなくなるので、筋肉のアンバランスがより強くなり、治ってからの再発の原因になります。
柔軟性が極端に低い場合も、柔軟性を改善しなければ何度も肉離れを繰り返す事になってしまいます。
つまり、肉離れを起こす人には、それぞれに肉離れを起こす体の原因があり、その原因が改善されなければ、肉離れを何度も起してしまう。
それが、肉離れが再発しやすいと言われる理由です。
肉離れの治療期間
肉離れはどれぐらいで治るのか?
肉離れは筋肉が切れる怪我なので、切れた筋肉が修復するまでの期間が治るまでの時間ということになります。
※厳密に言うと、修復して筋力・柔軟性が戻って競技に復帰するまでが治療期間ですが
肉離れの重症度分類
軽度(Ⅰ度) |
筋肉自体や筋膜にはほとんど変化はなく、筋線維が引き伸ばされた程度のもの局所の圧痛(押さえた時の痛み)のみのことが多い |
中程度(Ⅱ度) |
部分的な筋肉の断裂。筋線維の断裂があるが、圧痛だけでなく軽い陥凹や軽い運動時の痛みもある |
重症(Ⅲ度) |
筋肉の完全な断裂で強い痛みがあり、局所陥凹や塊が見た目で分かる。 |
おおよその目安ですが、軽傷例で1~2週間、中等度で4~8週間、重症例(手術例)12週以上の期間が必要です。
肉離れは軽傷~中等度の場合、医療機関を受診せずに自分で治療することも多く、スポーツ選手の場合は完治するまでに復帰してしまう事もよくあります。
修復過程の脆弱な筋肉に負担をかけると、症状を重症化させてしまう事もあるので競技復帰は医療機関を受診して判断してもらいましょう。
少しでも早く治す為に肉離れの応急処置
肉離れの重症度に関係なくすべてに共通する事は、怪我をした直後から48時間は
RICE処置をしっかりする事です。
①患部を頭より高くして安静 ②しっかり冷やす ③包帯やテーピングで患部を軽く圧迫する
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/post-397
このRICE処置を怪我をした直後にどれだけ守れているかによって治りが変わってきます。
とにかくしっかりと冷やして、切れた筋肉の周辺に溢れる血液を少しでも早く取り除き、腫れを引かせることが重要です。
痛みがなくなってくれば、筋肉を温めて軽めのストレッチやウォーキングなど痛みのない動きから徐々に開始していきます。
肉離れを動画で見て学ぶ
解説は英語ですが、肉離れがどこでどんな風に起こるのかを目で見て理解する事ができます。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=CubBXSt_NRw
肉離れの予防 ストレッチなど
肉離れを引き起こす原因は
① 柔軟性の不足、運動不足
② 筋力のアンバランス、不良姿勢
③ ウォーミングアップの不足
④ 疲労、オーバートレーニング
などが挙げられます。
肉離れにならない為、肉離れを再発しない為にも上記の原因を対策し予防に努めましょう。
ストレッチ
https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=cJpXyyrw9Ns
充分なウォーミングアップ
充分なウォーミングアップで筋肉の温度を上げてから運動するようにしましょう。
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/11plus
筋力のバランス&不良姿勢の改善
肉離れを引き起こす原因には筋力のアンバランス、それが引き起こす不良姿勢も影響します。
肉離れで試合に出られない期間などは、患部のトレーニング以外にも全身の筋力と柔軟性を改善することが非常に重要です。
疲労
肉離れに筋肉の疲労が影響していることもあります。
試合終了間際や練習の後半には怪我に注意が必要です、試合の後半で怪我を恐れて力をセーブすることはあまりないと思いますが。
1試合を通してよいパフォーマンスができるように、オーバートレーニングにならないように普段の練習計画から調整をしましょう!
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/overtraining
スポーツを再開するためのチェックポイント
●腫れていない、関節を動かして痛みがない、患部を抑えて痛みがない
●まっすぐ走って痛みがない
●ジャンプして痛みがない
●まっすぐ走ってから止まる動作で痛みがない
●方向転換(カット)の動作で痛みがない、ジグザグに早く走れる
●相手の動きに合わせて動いて痛みがない
●ボールを蹴って痛くない
出典:内側側副靱帯損傷 スポーツ復帰に必要な事
など肉離れは腕にも、体幹にも起こる可能性がある怪我なので上記の基準から外れる場合もありますが
基本的には動きの中で「痛みがないこと」が競技復帰で守るべき判断基準となりま。
以上、肉離れについてまとめてきました。
・肉離れとは筋肉が自分の力で切れることであり、筋挫傷と呼ばれる。
・肉離れは筋肉の付け根あたりで切れることが多い
・肉離れの原因は柔軟性、ウォーミングアップの不足、筋力のアンバランス、疲労などが影響している
・早く治す為には、最初の応急処置が重要
・肉離れは再発しやすい怪我なので、再発予防も重要
・痛みがなくなれば関節が固くならないように運動を開始する |
子供のスポーツの指導者の方なら、自分が注意しておかなければいけない身近な問題かもしれません。
子供達と一緒にスポーツをして「ブチっ」っとやってしまった・・・
という事のないように注意して、子供達と一緒にスポーツを楽しみましょう!
参考情報
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/bunrishou
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/muscle
おすすめの本
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