今日は鼠径部の痛みについてのお話です。
サッカー選手に多いと言われている鼠径部の痛み。私のチームの子供たちにも股関節の周辺に痛みを訴える子が何人かいました。
サッカーの指導者や保護者なら身近に起こる可能性のある問題、鼠径部痛症候群(groin pain syndrom)。
この痛みの原因と対処方法についてみていきましょう。
鼠径部とはどこなのか?
鼠径部痛症候群の説明の前に
鼠径部とはどこのなのか?を説明しておきましょう。
鼠径部とは股
(もも)の付け根のややくぼんだ線より上にある三角状の部分の事をいいます。
鼠径部の下の部分には鼠径靭帯という靭帯があり、その下を太い大腿動脈や神経が通ります。
簡単に言うと、
足の付け根から下腹部あたりです。
鼠径部痛症候群(groin pain syndrom)とは?
鼠径部痛症候群とはいったい何なんでしょう?
鼠径部痛はその名の通り鼠径部の痛みです、鼠径部に痛みを訴える傷害はいくつかあります。
例えば
●「関節唇損傷、股関節インピンジメント」関節周りの軟骨の損傷や関節のひっかかり
●「恥骨の剥離骨折、疲労骨折」
●「鼠径ヘルニア」「スポーツヘルニア」いわゆる脱腸
●「恥骨結合炎」「肉離れ」
このような
明らかな原因が見つからないにも関わらず、体幹~脚の動き、安定性、スムーズな動きができない事によって、骨盤周辺の動きが悪くなり、運動時に鼠径部に痛みを起すものを
「鼠径部痛症候群」と呼んでいます。
例えば、足を怪我した投手が下半身を使わずにボールを投げ続けていたら肩を壊す。
同じように、腕と体を上手く使わないでボールを足だけで蹴っていれば痛みを引き起こす。
こんな理由で起こる股関節の痛みの事です。
最近は医学、医療機器の進歩により、股関節の痛みの原因を特定することが可能になってきていますが、それでも5割は「明らかな原因が見つからない股関節の痛み」です。
鼠径部痛症候群の痛みはどこに出るのか?
鼠径部と太ももの内側の付け根に痛みを感じる人が多いようです。
この場所に痛みを感じる人が多いのも、古くからスポーツヘルニア、恥骨結合炎と診断されてきた理由なんだと思います。
左右の違いについては、右側のみが36%、左のみが27%、両足が37%だったそうです。
出典:Sports medicine No157,2014,1 鼠径部症候群 治療の変還と展望を語る 仁賀 定雄 Dataを作図
鼠径部痛症候群の治療
「恥骨結合炎」「スポーツヘルニア」なら、安静・消炎・手術など治療法がありますが、鼠径部痛症候群に対して異なる病気の治療をしていても良い方向には向かいません。
鼠径部の痛みを引き起こす、原因となる動きを改善する必要があります。
●股関節周辺の筋肉の柔軟性低下
出典:Sports medicine No157,2014,1 鼠径部症候群 治療の変還と展望を語る 仁賀 定雄
特に股関節外旋筋の柔軟性に左右で大きな違いがある場合などは、しっかりとストレッチやマッサージで柔軟性を取り戻す必要があります。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=hUCfkhmyQWs
●股関節外転筋力の低下
出典:Sports medicine No157,2014,1 鼠径部症候群 治療の変還と展望を語る 仁賀 定雄
片足立ちで骨盤が上げた方の足へ傾くようであれば、股関節外転筋の筋力トレーニングが必要です。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=hQ93T6kL–M
●体幹筋力の低下
世間で広く知られるようになったコアトレーニングも重要です。
体幹の筋力が弱ければ、安定性がに欠け股関節への負担も大きくなってしまいます。
指導者、保護者、選手に必要な予防の知識
鼠径部症候群についての治療法について簡単に説明しましたが、治療は専門家がする事です。
指導者や保護者と選手が考えなければいけない事は、
予防です。
私はこのようなスポーツ障害の記事を書くときに必ず書いている事ですが
「なってからでは遅い」スポーツ障害で最も重要な事はスポーツ障害にならない事です。
その為に必要な知識をチェックしておきましょう。
① 全身を使ったキックの動きを覚える
特にジュニア年代に重要な要素だと思います。
手と肩、体と足が上手く連動したキックのモーションをしっかりと体に染み込ませる事です。
出典:Sports medicine No157,2014,1 鼠径部症候群 治療の変還と展望を語る 仁賀 定雄
キックの動作の時に体をまっすぐに安定させて、手と足を使い回旋する動きしっかりとマスターできるようにしましょう。
特に上手く蹴れていない子供たちには、壁を使ってキックのモーションの反復練習も有効です。
出典:Sports medicine No157,2014,1 鼠径部症候群 治療の変還と展望を語る 仁賀 定雄
② 怪我をした状態でプレイはしない
すべてのスポーツ障害で言える事ですが、単純な足首の捻挫でも痛みがあれば他の関節へ影響が出ます。
足首を捻挫して、つま先を外に向けて歩いていれば1週間で股関節が痛くなりますよ。
その時は問題がなくても、後で重篤なスポーツ障害へと発展する事もある事を理解しておいてください。
痛みがある状態でプレーを続ける事はやめましょう。
③ 充分な柔軟性と筋力を確保する
スポーツ障害を引き起こす大きな原因は柔軟性の不足です。
特に、鼠径部痛症候群の場合は股関節外旋筋という筋肉の柔軟性の低下が大きく影響します。
しかし、それ以外の関節の動きが悪い場合も間接的に、鼠径部痛症候群の原因になります。
充分な柔軟性を確保する為にも、普段からの体のケア、疲労が蓄積した状態で運動を続けないなど管理する事が大切です。
体をしっかりと支える筋力をつける事は重要です。
ジュニア年代ではしっかりと筋力をつけるトレーングよりも、筋力をしっかり発揮できるように体の使い方を学ぶの事が大切だと思います。
鼠径部痛症候群についてまとめてきました。
鼠径部、骨盤、股関節の周辺は非常に複雑で痛みがあっても確定診断が出ない事もよくあります。
しっかりと治療を受けず、痛みが慢性化すると、将来的にプレーする事が難しくなるもあります。
痛みがあれば、まず安静にし医療機関を受診して、診断に応じた治療を早期にうけるようにしましょう。
怪我でサッカーができなくなる選手がひとりでも減りますに。
参考文献
Sports medicine No157,2014,1 鼠径部症候群 治療の変還と展望を語る 仁賀 定雄
Sports medicine 公式ブログ
http://msm08.blog96.fc2.com/
参考記事
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/kegaonaosu
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/sever
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/osgood-schlatter
おすすめの本
私はこういった本が大好きです。スポーツでの体の使い方「なぜ?」を科学的根拠を説明しながら書かれています。おすすめの一冊です。
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