スポーツには様々な取り組み方があります。
レクリエーションとして楽しむスポーツ、競技として楽しむスポーツ
どちらの場合も「楽しむ」ということが重要なキーワードになりますが、スポーツには結果があるので選手や指導者、観客や保護者にとっては感情を大きく揺さぶられる場面がたくさんあり、感情の変化によっては「楽しめなくなる」ことがあるのも事実です。
子供たちにスポーツの指導をしていると、どうしても自分の感情や行動を抑えられない子が、言葉や暴力で人を傷つけてしまうことがあります。
感情を抑えきれないのは子供たちだけではなく、子供たちを見守る指導者・保護者・観客にも同じことが言えるかもしれません。
選手が動けなくなるような厳しい言葉でのコーチング、選手を批判するような言葉、あるいは暴力。
良くも悪くも、感情が揺さぶられるからこそ「楽しいスポーツ」
スポーツをもっと楽しむために自分自身の感情をコントロールする、セルフコントロールについて検討してみましょう。
多動性・衝動性とは?
衝動的に行動してしまうことは人間誰にでもあることです。
しかし、それが人間関係など自身の社会生活にも影響が出る可能性もあります。
注意欠如多動性障害(ADHD)
発達障害に含まれる注意欠如多動性障害、ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」の3つのうち2つの症状がみられ社会生活で支障をきたしている状態です。
この症状は人によって「多動、衝動性」が強い人もいれば、「不注意」が強く出てうっかりミスが目立つなど様々です。
多動・衝動性が優位な場合
【子供の場合】
・落ち着きがなくじっとしていられない(授業中に立ち歩くなど)
・話の途中で話を遮って話始めてしまう
・順番を待つのが難しい
・ケンカになりやすい
【大人の場合】
・話を最後まで聞くのが難しい
・失言が多い
・大事なこと、高価な買い物を1人で決めてしまう
世間一般の目線から見ると「わがままな人」「自分勝手な人」「キレやすい人」というような印象を受けるかもしれません。
しかし、多くの場合わざと困らせようと思って衝動的な行動に出ている訳ではなく、積極的に人との関わりを持ちたくて、相手の気持ちも理解できるのだけれど、自分の気持ちを抑えることができない
関わりたいのだけども、関わり方が上手くいかず何度も失敗して悩んでいる方も多くいます。
スポーツにおける子供の多動性・衝動性
スポーツの現場で多動性・衝動性が見られる子ども達は
・コーチの集合の声は聞こえているが、目の前の事を優先して集まるのが遅れてしまう
・コーチの会話の途中に砂遊びなどの手遊びに夢中になってしまう
・ルールのある練習、四角から出ないでプレーするなどをいつまでも守ることができない
・ボールを持ったら味方に渡すこともなく、自分1人でプレーしてしまう
・ボールを奪われると手で相手を掴んだり、足で蹴るなどのファールをしてしまう
・仲間の失敗に「暴言」を言ってしまう
・人の話に割り込んだりケンカになることも多いので、仲間から孤立しやすくグループに上手く入ることができない
このような行動が見られることがよくありますが、これらは幼い子供では当たり前にある現象で、高学年や大人になるにつれて症状は抑えられるようになってくると言われています。
しかし、、自分自身の感情をコントロールする方法を学んでない場合は、成長しても多動性や衝動性の影響で社会生活に支障がでることもあるようです。
スポーツにおける大人の衝動性
大人の場合も子供と同じような行動が見られますが、多動は比較的抑えられるようです。
衝動性は大人という立場によって子供とは違った形で見えてきます。
・子供や選手の失敗に対して罵声を浴びせたり、厳しい罰則を与えてしまう
・子供の問題行動に対して暴力をふるってしまう
・自チームの指導者、相手チームの保護者(ファン)などと衝突しケンカになってしまう
・子供や選手の前で仲間や指導者の批判をするなどの失言をしてしまう
・インターネットに差別的な書き込みをしてしまう
・試合中に相手選手に手を出す、噛みつくなどの反則行為をしてしまう
大人の場合は選手としてだけでなく、教える立場として、保護者として、ファンとしてなど様々な立場でスポーツに関わりますが、それぞれの立場で、限度を超えた衝動的な行為が見られることがあります。
スポーツの指導における体罰の問題、プロスポーツ選手の問題行動なども自らをコントロールするセルフコントロール能力が高ければ抑制できるのかもしれません。
後悔している
衝動的にルールを守れなかったり、暴力や暴言を使ってしまった後は、多くの人が「なぜ?あんことをしてしまったんだろう?」自分自身の行為を後悔しています。
しかし、自分自身をコントロールできていない状態では、同じような場面で同じ失敗を繰り返してしまいます。
「またやってしまった、次は絶対にしない」と心に決めても、その瞬間の衝動を抑えることができません。
「怒らないって約束したでしょ!」
「何度言ったら分かるの!」
「また同じ失敗を繰り返して!」
「そんな風に考えるからダメなんだよ」
こんな風に注意することは、本人も分かっているのに止められないことを言われているだけで効果は期待できません。
感情をコントロールするには?セルフコントロール
感情をコントロールするためには「なぜ我慢できないのか?」を先に理解しなければいけません。
なぜ我慢できないのか?
1) 感情の理解が進んでいない
快か不快かの二分、白か黒か?の考え方が強く、途中の感情が育っていないため他者の気持ちが分かり難い
恐怖心や不安が強いため周囲の評価に過度に敏感になる、勝ちか負けにこだわる、失敗、自分の描いていることと違うプレーが許せない
2) ストレスに弱い
自分の感情を理解し受け入れる力が弱く、ちょっとしたことで、カッとなったり落ち込んだりしやすい。批判された、拒否されたなどに敏感
3) 道徳の理解が不十分
ルールはわかっていても、なぜルールを守る必要があるのか納得できないため、
無理やり自分のルールに周囲を合わせようとするか、ルールを無視して好き勝手にしてしまう
4) 社会性が未発達
問題を解決する力が足りず、問題から逃げる、 わがままを通すための手段として暴力や暴言を使ってしまう。
衝動的になる自分をコントロールする為に
1)興奮した心の落ち着かせる方法をみつける
・深呼吸する
・10秒カウントする
・ボールやタオルを強く握りしめる
・その場を離れる、など
2)自分の考え方の癖を知る
・~OOでなければならない。勝たなければならないなど白黒思考から離れられない
・誰かに認めてもらいたい。OOに選ばれたいなど認めてもらいたい欲求が強く、それを証明する為に、自分のプレーを妨げられたり、負けると衝動的になる
・仲間の失敗が許せない、プレー中の次の自分の行動が変わることが許せない。
など衝動的な行動に出てしまう時の考え方の癖を知り、負の方向に陥りやすい思考を変えていく
3)社会性を身につける
相手チームや子供、選手に対する愛着心を育て、傷つけないように接することを学ぶ
衝動性をコントロールする為に指導者にできる環境作り
セルフコントロールの能力は一朝一夕で身につくものではありません、日々の積み重ねで少しづつ変わって行きます。
少しでも子供たちがスポーツを通じてセルフコントロールの能力が向上するように、指導者は接し方、環境づくりに配慮することが大切です。
一緒に考える
暴言や暴力に対しては早めに対応することが大切です。
見て見ぬふり、「やらせておけ」の対応では変わりません。
暴言や暴力が出たらその行為自体を厳しく叱るのではなく、
暴言や暴力に至った考え方について子供と一緒に話をして変えていきましょう。
待つことに慣れる
待つことが苦手な子もたくさんいます。
試合の合間の昼食などは全員が準備できるのを待ちましょう、試合のあとの荷物の片付けも全員が終わるまで待ちましょう。
待つことを覚えるのも自分自身をコントロールする為に大切な能力です。
物を大切にする
物の扱いが乱暴な人は人に対しても乱暴な扱いをしてしまうことがあります。
サッカーで使う道具を丁寧に大切に扱うことを子供たちに教えましょう。
物を大切に扱い、物に対して愛着を持つことが人に対する愛着心を育てます。
準備のお手伝いをしてもらう
グラウンド、コートの準備などを手伝う習慣をつけましょう。
グラウンドや体育館に着いたらすぐにボールを使ったり、体を動かしたくなりますがその気持ちを抑えて、まずは荷物の整頓、コートの設営など、しっかり準備ができるようにしましょう。
気持ちの切り替え
気持ちを切り替える練習をしましょう。
特にスポーツでは自分のミスによる失点、仲間の失敗による失点など大きく感情を揺さぶられる場面が頻繁にあります。
気持ちを切り替える手段を子供たちが身につけられるように、その場で深呼吸をする、仲間同士の手を握る、自分の拳を強く握るなど気持ちを落ち着かせる方法を覚えましょう。
どうしても我慢できない時の逃げ場を作る
どうしても衝動的な行動や怒りを抑えることが難しい時は、その場から立ち去るなど逃げ場を確保しましょう。
スポーツのプレー中であれば指導者と子供にサインを決めて、そのサインが出れば交代できるような工夫があると子供は安心してプレーに臨めるかもしれません。
以上、簡単なようにも思えますが、こうして対策したからと言って衝動的な行動がすぐに減るわけではありません。
この指導者との関係、スポーツをする環境の中で子供たちが学び少しづつ変化してくれると思います。
匂いによるコントロール
衝動性のコントロールと少し話がズレるかもしれませんが、スポーツ選手の中には匂いを上手く使う選手もたくさんいます。
スポーツの最中は自分自身の心が乱れたと感じても、なかなかその場を離れて冷静になるための時間が取れません。
スポーツ選手の中には試合の時に、自分のリラックスできる香水やアロマオイルをつけて試合に臨む選手が大勢いるそうです。
自分の心が乱れたと感じた時には、自分がリラックスできる好きな匂いを嗅いで心を調整するそうです。
すごく簡単でいい方法ですね。
フェアプレー・暴力・リスペクト
組織的にフェアプレーを推奨し、暴力を追放、選手や審判などスポーツに関わるすべての人に敬意を払おうという動きがスポーツ界で広まってきています。
しかし、現状では暴力や暴言事態をダメ!と否定していることが多く、そこに至るまでの考え方や暴力や暴言をコントロールする方法についてはあまり触れられていないような気がします。
社会全体の流れとして暴力・暴言はダメ・相手に敬意を払いましょうという考え方が浸透し、根本的なスポーツへの取り組み方が変わることが狙いだと思いますが
暴力や暴言をするつもりはないけど、感情のコントロールが難しい指導者や保護者・子供がいることを理解して、自分自身をコントロールできるようにアプローチできたら、よりよいスポーツの世界が作れるのではないか?と考えています。
参考情報
デイビッド・ルイス CCCメディアハウス 2015-02-26
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こんにちは。SUZUKIです。
先日はアドバイスありがとうございました。
今回もまた、涙がでる内容で・・・ためになります。
「発達障害の子のイライラコントロール術」ですが、とても気になります!
早速購入しようと思います!
ありがとうございます
指導者がどう自分の感情と向き合うのか?よい機会になりました
ありがとうございました