今日のテーマは骨折です。
日常生活でも何かの拍子に起こりうる可能性のある骨折
スポーツの現場でできれば遭遇したくないですが、スポーツをしていれば避けきれない場合もあるのが骨折です。
今日は骨折について掘り下げて考えてみたいと思います。
骨折はなぜ痛いのか?
骨折をした時には強烈な痛みが伴います。その強烈な痛みはなぜ起こるのでしょう?
その理由は簡単に説明すると2つ
① 骨の周りの膜が破れるから
出典:Innervate The World!
骨の周りには膜があります(骨膜)、この骨膜にはたくさんの神経と血管が通っています。
骨折の瞬間に骨の折れた場所では、この骨膜が破れます。
その時に骨膜に張り巡らされた神経に傷がつき、脳に痛みの信号を送るので強烈な痛みを感じます。
骨折そのものによる強い痛みは、患部を固定して安静にしていれば急性の炎症症状が納まる1週間程度で落ち着きます。
② 周りの組織が傷つくから
骨折をするということは、硬い骨が耐えられないほどの力が一か所に集中します。
例えば、重たいもので踏みつけられたり、蹴られたり
骨の周りには筋肉や脂肪などの柔らかい組織がありますが、骨折の際にはだけでなくその周囲の筋肉などにも傷がつくので痛みを感じます。
※高齢者の背骨の骨折(圧迫骨折)など、骨が徐々にもろくなって崩れる場合は稀に痛みを感じないで折れる骨折もあります。
骨折するとなぜ腫れるのか?
先ほど説明した「骨折するとなぜ痛いのか?」と理由は重なりますが
骨膜には神経以外にも血管がたくさん通っています、そして骨折した骨の周りの筋肉にも血液がたくさん流れています。
骨折をすると、それらの血管にも傷がつくので出血します。
皮膚の下でたくさんの出血があると、その場所は内出血(皮下出血)によっ血液が溜まり腫れあがります。
骨折がどうやって治るのか?
ご存知の通りヒトには折れた骨を自分の力で修復する力があります。
骨はどうやって修復されるのか?を見て行きましょう。
①折れた骨の隙間を血液が埋め尽くす
骨折と同時に骨膜に張り巡らされた血管が切れます。
するとそこから出血が起こり、折れた骨と骨の隙間を血液が埋め尽くします。
②骨と血管の再生が始まる
骨折の隙間に新しい骨の細胞(骨芽細胞)が生まれ新しい骨が隙間を繋ぎ始めます。
同時に毛細血管が新たに作られ、切れた血管を修復します。
③ スポンジ状の骨が完成
新しい骨の細胞がどんどん増え、まだ強度の強くないですがスポンジ状の骨が折れた骨の隙間を埋めて行きます(仮骨形成)。
④ 補強して完成
骨の再生サイクルを繰り返し、新たに出来た骨の強度がどんどん強くなります。
そして元の強度に近い骨が完成し、骨の修復が終了します。
レントゲンなどで見ると、折れた場所の骨は太く見えるので強くなったようにみえますが。
折れた場所の骨が他よりも強くなるとことはありません。
骨折の種類
「骨折」と言っても、折れ方は様々で折れ方によって骨折はいくつかの種類に分けられます。
閉鎖・開放骨折
骨折周囲の皮膚が破れているかいないかで大きく「閉鎖骨折」と「開放骨折」に分類されます。
開放骨折は傷口が細菌などで汚染されやすく、細菌に感染すると皮膚や骨折の治りが遅くなるので注意が必要です。
綺麗な包帯などで止血して、副木(添え木)などで固定して早急に受診する必要があります。
はく離骨折
強い力が加わった時に、腱や靭帯に骨が引っ張られて剥がれてしまう骨折です。これらの骨折は通常、手、足、足首、膝、肩でよくみられます。
粉砕骨折
一般的には複雑骨折と呼ばれる骨折です。
骨が多数の断片にまで破壊される骨折で、非常に強い力による怪我や骨粗しょう症による骨の弱体化が原因となって起こります。
関節内骨折
関節の中で起こる骨折です。骨の端で関節になっていると所は、血液の流れる量が少なく骨折が起こると治癒するまでに時間がかかります。
また、滑りやすくなめらかな構造の関節が骨折で傷ついてしまうと、関節の動く範囲の制限になりやすくリハビリに時間がかかることがあります。
圧迫骨折
背骨が押し潰される骨折です。
高いところからの転落などでも起きた場合は、動けないほど痛みも非常に強いですが
高齢で骨粗鬆症などによって骨がもろくなって折れる場合は、腰痛程度の痛みで折れている事に気づかない方もいます。
胸と腰の骨の入れ替わるあたり(Th11-L2)でよく起こると言われています。
病的骨折
転落・転倒、交通事故などの強い力が加わって折れる骨折とは違い。
悪性腫瘍などの病気が原因で骨がもろくなって折れることを病的骨折といいます。
疲労骨折
スポーツなどで繰り返し骨の同じ場所に負担がかかり折れてしまうことを疲労骨折と呼びます。
腰椎分離症やサッカー選手によく見られる、第5中足骨の疲労骨折(
Jones骨折)などが有名です。
骨折は細かく分けると、もっと多くの分類がありますが大まかにはこのような骨折の呼び方があります。
骨が再生するのにどれぐらいの時間がかかるのか?
骨折の治癒にかかる期間は骨の種類や折れ方、年齢や食生活などの生活スタイルも影響するので決まった期間はありません。
一般的に治療にかかる期間としては、以下のようなものがあります。
グルト(Gurlt)の骨癒合日数
Cold Wellの骨癒合の表
もう少し詳しく、機能の回復までの目安を示したのがCold Wellの表です。
部位 |
Coldwell |
仮骨出現 |
骨癒合まで |
機能回復まで |
指骨 |
2~3週 |
3~6週 |
6週 |
中手骨 |
2~3週 |
3~6週 |
6週 |
中足骨 |
2~3週 |
3~6週 |
6週 |
橈・尺骨 |
骨幹部 |
3週 |
6~8週 |
10~12週 |
肘関節内 |
3週 |
5週 |
12~14週 |
手関節内 |
3週 |
6週 |
7~8週 |
上腕骨 |
下端部 |
2~4週 |
6週 |
8週 |
骨幹部 |
2~4週 |
6週 |
8週 |
上端部 |
2~4週 |
6週 |
8~12週 |
骨盤 |
4週 |
8週 |
8~16週 |
大腿骨 |
頚部 |
12週 |
24週 |
60週 |
転子間部 |
4週 |
12週 |
16週 |
骨幹部 |
6週 |
12週 |
14週 |
顆上部 |
6週 |
12週 |
14週 |
膝蓋骨 |
6週 |
6週 |
6~12週 |
脛・腓骨 |
膝関節内 |
6週 |
6週 |
14週 |
骨幹部 |
4週 |
6週 |
12週 |
足関節内 |
6週 |
6週 |
12週 |
踵骨 |
6週 |
8週 |
2~14週 |
何度も言いますが、これらはあくまで目安なので骨癒合にかかる時間は個人の状況によって異なります。
自己判断せずに医師の指示を守ってください。
こどもの骨折の特徴
子供の骨は柔らかいので折れる直前で変形して、それ以上の力がかかると折れてしまう。
そのため、不完全な骨折になることが多い。
もう一つ、子供の骨は成長過程なので骨の再生が早く、多少の変形は自分の力で元の形にもどる力があります(自家矯正力)。
しかし、子供の骨は大人とことなり成長する力を蓄えている場所があり(骨端線)、そこは脆弱で骨折しやすく、そこが折れてしまうと成長障害・変形を残してしまう可能性もあります。
骨端線の骨折
骨の成長を溜めている場所は骨の端にあります。上の図でいうと骨の上にお皿が乗ったように見える場所です。
ここが折れてしまうと、成長を阻害する可能性があるので心配です。
引用:荒木 力, 原 裕子編 すぐわかる小児の画像診断 東京, 秀潤社, 2011, p351.
特に骨端線が押し潰されるように折れた場合は、骨端線が早く閉鎖してしまい成長に障害をきたす可能性もあります。
まとめ
骨折はなぜ痛いのか?から始まり、骨折がなぜ治るのかについて簡単に説明してきました。
■骨折が痛いのは、骨膜が引き裂かれる痛みとその周囲の筋肉などが傷ついくから痛い
■骨は自分で新しい骨を作りだして、折れた部分に橋をかけて治っていく
■骨が治るまでの期間は、骨の場所や種類、折れ方・年齢など様々な理由で変わる。
■子供の骨折は治るまでの期間が早い、しかし骨端線が折れると成長障害・変形などの問題を残す可能性がある。
これらはあくまで、骨折の一般的な知識として知って欲しい事です。
骨折をした時には、自分で判断せずに必ず医療機関を受診してください。治療期間中も医師の指示を守って自己判断で動かし始めないようにしましょう。
骨折の応急処置とリハビリについては、それだけで長くなるので改めて記事にしていこうと思います。
子供のスポーツの現場ではできるだけ遭遇したくない骨折ですが、アクシデントを全て防げる訳ではありません。
子供が骨折した時に、間違った対処をしないように骨折の基本的な知識を指導者や保護者が持っておくことも大切だと思います。
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