スポーツをする子供の腰の痛み、その多くは腰への蓄積した疲労が原因です。
中でも腰椎分離症(すべり症)は、腰椎の疲労骨折が原因で治療に時間がかかります。
しかし、同じようにスポーツをしていても腰に痛みを感じない子もいます、いったい何が違うのでしょう?
その違いを理解して、予防に必要な事や痛みを軽減させる方法を考えて行きましょう。
腰椎分離症(ようついぶんりしょう)とは?
生まれつき腰椎が分離(割れている)している分離症もありますが、ここでは発育期のオーバートレーニングによる腰椎分離症について説明していきます。
腰椎分離症とは、スポーツなどの激しい運動によって繰り返し腰の骨(腰椎)に負担がかかり、腰椎が疲労骨折を起すのが原因だと言われています。
骨折は腰椎と骨盤(仙骨)の境目になる
第5腰椎に多くみられます。
日本人全体では5%、スポーツ選手では10~30%とスポーツ選手に多く、またスポーツをしている10~17歳、中学生や高校生に多く発症します。
腰椎分離症はどこが折れるのか?
腰椎分離症の骨折は背中側の突起の部分(腰椎関節突起間部)で骨折が起こります。
ストレスのかかり方によって、突起の両側が折れたり、片側が折れたり、縦に割れたり、横に割れたり折れ方も変化します。
どこで折れるのかを簡単なイラストにしたのが下の図です。
【腰椎を真上から見たイメージ】
【横から見たイメージ】
どんな動きで折れるのか?
腰椎分離症は疲労骨折なので、1度や2度の激しい運動をしたからといって起こる訳ではありません。
練習や試合で何度も腰椎にストレスがかかり、だんだんと脆くなって折れてしまいます。
特に下のイラストのような「
背中を反らす(伸展)」と「
身体をひねる(回旋)」という2つの動きで腰椎にはストレスがかかると言われています。
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腰を反る、捻る動きは競技の中にいろんな動作で繰り返されます
例えば、野球のバッティング、ピッチング
バレーボールのスパイク
photo by Charles Luk
サッカーのキック
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photo by apasciuto
強い力をボールに伝える為には、体を大きく反らせて捻る動きが必要です。
強い力でボールを投げる、蹴る、スパイクを打つ、その度に腰への負担が繰り返しかかります。
腰椎分離症は腰椎の突起の両側が折れる場合と片側だけ折れる場合があります。
腰を反る動き(伸展)によってストレスを受けて折れる場合は両側、捻る動き(回旋)の場合は片側の骨に負担がかかります。
その為、競技やその子の身体的な特徴によって折れ方が変わってきます。
両側で折れて、骨折が治らなかった場合は「すべり症」という病気に発展してしまう可能性が高くなるという報告もあります。
腰椎分離症の治療方法
腰椎分離症の基本は手術などをしない(保存療法)です。
初期の骨折であれば、硬性コルセットというコルセットをつけて3か月間、競技を中止して骨がつくのを待ちます。
この間にしっかりとリハビリをする事も重要です。
ここで難しいの事は、競技を3か月中止する事ができない?しない?選手が多い事です。
安静期間を守れずに、痛みをこらえて競技に復帰してしまい、症状を悪化させる事があるのが現実です。
骨折が末期の状態で腰椎分離症が見つかると、コルセットをつけて安静にしても骨がつく事が難しい場合もあります。
その場合は
運動が可能なコルセットを装着して、痛みをコントロールしながら競技に復帰することもあります。
どちらの場合も、症状をそれ以上悪化させないために、体幹の筋力トレーニング、股関節の可動域(動く範囲)を改善することは非常に重要です。
たかが腰の痛みと甘く考えず、早期に診断をうけ治療を開始するようにしましょう。
腰椎分離症を予防するのに重要な股関節の柔軟性
同じ運動をしても、腰に負担がかかる人と負担が少ない人がいます。
その違いに大きく影響すると考えられるのは、股関節の柔らかさと姿勢です。
腰の骨はもともとそんなに大きく動く関節ではありません。
その動きを補うのが股関節で股関節の動く範囲が狭くなれば、腰への負担は大きくなります。
「体を反る」「体を捻る」その動き範囲を拡げる為にも股関節のストレッチで充分な柔軟性の確保が必要です。
特に15歳ぐらいで身長が大きく伸びる時期には、足の筋肉の柔軟性が低下すると言われているので注意が必要です。
ストレッチングについては少し難しいけど詳しいのは、
メディカルストレッチング(第2版)
入門として分かりやすいのは、
5つのコツで もっと伸びる カラダが変わる ストレッチ
などの書籍も参考にしてください。
柔軟性を確保すると同時に重要なのは姿勢。
骨盤がまっすぐになっていないと、背骨の動く範囲は狭くなります。
その為には、お腹の筋肉をしっかりとうまく使えるようにして、正しい姿勢(骨盤の位置)を維持しなくてはいけません。
その為のトレーニングにはコアトレーニングが有効です。
体幹の筋肉を上手く使えるようにする事で、よい姿勢を維持し腰にかかる負担を減らす事ができます。
体幹のトレーニングと言えば、木場 克己氏の
体幹力を上げるコアトレーニングが導入として最適だと思います。
腰椎分離症について簡単にまとめてきました。
腰椎分離症は成長期のスポーツ選手に好発するスポーツ障害です。
腰椎に繰り返し負担がかかり、疲労骨折が起こると考えられており、早期の診断と治療開始が重要です。
治療はコルセットで腰にかかるストレスを軽減し、股関節、体幹機能の改善が中心となります。
全てのスポーツ障害に共通して言える事ですが、成長期の柔軟性の低下をしっかりとストレッチで補い体の一部分にかかる負担を減らすことが重要です。
たかが腰痛と思って、痛みをこらえて競技を続けると将来的に「すべり症」に発展するなど、競技を続ける事も難しくなる可能性があります。
痛みがあれば運動を中止して必ず受診しましょう。
そして、何度も言いますが股関節の柔軟性、体幹の筋力改善に努めて、痛みがなくなってから競技に復帰するように心がけましょう!
1人でも怪我でスポーツができなくなる子が減る事を、心から願っています。
参考記事
腰椎分離症の研究 西良 浩一 Sportsmedicine 2009-114
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/overuse-missuse
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/osgood-schlatter
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はじめまして。
わたしは千葉で中学校の養護教諭をしております。
子どもとスポーツについて、大変勉強になる内容で、いつも興味深く読ませていただいております。
このたび、中学生のスポーツ傷害に関して、予防と知識理解にあたり、指導用の資料を作成しているのですが、よければこのブログ内の一部の文章とイラストを使用させていただきたいなと思い、コメントさせていただきました。
よろしければご検討いただき、ご連絡いただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
個別にお返事させて頂きました。
ご相談ありがとうございました