発育期に一生懸命スポーツをしている子供たちにみられる「踵(かかと)の痛み」
子供達は
「朝起きた時に、踵が痛い」
「練習の最初だけ、または終わってから踵が痛い」
こんな表現で痛みを伝えてくれます。
この「踵の痛み」の原因と対処方法について説明します。
シーバー病(Sever病)とは?
シーバー病、セーバー病、踵骨骨端症など、いろんな呼び方がありますが全部同じです。
発達段階の子供は、踵の骨の先が
成長軟骨(柔らかい骨)で出来ています。
「走る、ジャンプする、踏ん張る」などの力を入れる事で筋肉はギュッと縮まります。
筋肉がギュッと縮まる度に、踵の柔らかい骨を、「アキレス腱(ふくらはぎの筋肉)」や「足底筋膜(足の裏の筋肉)」が引っ張ります。
痛みは、骨の周りについている薄い膜(骨膜)が引っぱられ続けて、
炎症が起こる事で引き起こされます。
シーバー病になりやすい時期
シーバー病は、9歳〜14歳頃の子供に多く発症する「スポーツ障害」です。
|
小学生 |
中学生 |
高校生 |
脊椎分離症 |
0.90% |
1.60% |
1.30% |
野球肘 |
13.3 |
6.5 |
1.5 |
肩 痛 |
5.6 |
0.7 |
3.6 |
膝 痛 |
3.3 |
5.1 |
5.1 |
オスグッド病 |
6.2 |
6.9 |
1.3 |
踵骨骨端症 |
5.4 |
0.9 |
0 |
足 痛 |
3.7 |
8.1 |
3.8 |
引用:思春期のスポーツ障害 高澤 晴夫 順天堂医学 Vol. 44 (1998-1999) No. 3 p. 249-253
骨の成長に追いつけない筋肉
「オスグッドシュラッター病」の記事でも書きましたが、1つは原因は骨の成長に筋肉の長さが追いついていない事。
中学1年生の平均身長は152.5㎝、中学2年生159.8㎝(文部科学省統計 平成20年度)と
1年間で平均7.3㎝も身長が伸びます。
この急激な身長の増加に、筋肉は節(ふし)の数を増やす事で長さを伸ばすのですが、
それが
骨の成長に追いついていかない事で筋肉に柔軟性が少なく成長軟骨への負担が大きくなります。
もちろん、骨の成長に関係なく
筋肉の柔軟性のない子は、踵にかかる負担が大きくなります。
地面からの衝撃
「スパイクはいつから?」の記事でも書きましたが、成長期のサッカー選手は、13歳頃まで土踏まずの形成が未発達だと言う報告があります。
参考:成長期サッカー選手の内側縦アーチの横断的変化 広瀬 統一 東京女子体育大学
地面からの衝撃を吸収する土踏まずがしっかりと出来ていない足で、スパイクを履いてトレーニングをしているのも原因の1つです。
※特に軸足の土踏まずが崩れやすいと言われています。
※スパイクはトレーニングシューズの4倍以上の衝撃が足に伝わります。
つまり
、「柔軟性の少ない筋肉」「土踏まずの崩れ」「スパイクによる衝撃」これらが組み合わさって、踵の痛みに繋がると言う事です。
シーバー病の対処方法 ※痛みがある時は病院を受診してください
原因が分かれば対処もできる。
まず
「踵が痛い」と言い出したら練習を休みます、痛みがなくなっても、しばらくは
スパイクを止めましょう。
そもそも、私は土のグラウンドで練習する小学生なら常にトレーニングシューズでよいと考えています。
踵を引っ張る
ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)、アーチを崩す原因となる
足の裏(足の指を動かす筋肉)の柔軟性を確保することが重要です。
筋肉は弱い力で、長く引っ張る事で伸びて柔らかくなります。対処方法として
柔軟性の確保=ストレッチは正解です。
筋肉は温めると伸びやすくなります。対処方法として「温める」も間違いではありません。
しかし、
注意が必要です!!
引っ張られ過ぎて痛くなった踵を、ストレッチで強く引っ張る事は逆効果です。
赤く腫れた場所(炎症)や痛みのある踵を温めると痛みが強くなります。
ここからが工夫です
!
筋肉を温め、痛みのある場所を冷やす
ストレッチで踵が痛い場合は、マッサージで筋肉を伸ばす。
下の図のように、ピンと張ったゴム(筋肉)は押すと伸びます。
痛みのない程度に、筋肉を
押して伸ばしまょう。
ふくらはぎの太くなっている所(腓腹筋)、足の裏の土踏まず周辺(足指の屈筋)をゆっくり優しくマッサージするのが効果的です。
インソールで対処する
「スパイクの衝撃」「足のアーチの崩れ」が踵の痛みの原因に繋がるのであれば、衝撃を和らげ、アーチをサポートするのも有効
その為の道具が、
インソール(足底板、中敷き)です。
サッカー、野球それぞれの競技に合わせたインソールが市販されています。
私は友人にインソールを専門にしている理学療法士がいます。
専門家から言わせるとインソールでスポーツ選手のパフォーマンスを改善させるには、それぞれの体に合わせて微妙な変化をつける必要があるそうです。
しかし、衝撃吸収・アーチのサポートだけが目的なら紹介した
インソールで充分に効果を発揮する事ができると思います。
特に体の大きい子は足への負担も大きいので予防的にインソールを使用するのもよいと思います。
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/sokuteiban
ふくらはぎのコンディションを整えるアイテム
練習後の自己管理として有効なのが、疲労回復を促すリカバリーウェアーです。
靴下型のコンプレッションウエアー、適度な圧迫でふくらはぎのコンディションを整えてくれます。
普段から私も仕事で愛用しているSigmax社の
ザムスト コンディショニングシリーズが安心して使用できると思います。
その他にもジュニア専用の物も市販されています。
以上、踵の痛みと対策についてまとめました。
最も大切なことは予防です。オスグット病でも書きましたが、なってからでは遅い。
普段から、柔軟な体を作る事を心がける事が最も大切です。
痛みの原因を理解して、運動後のケアを自己管理できるように育てて行きましょう!
1人でも多く子供が「スポーツ障害」にならずに楽しくサッカーができますように、心から祈っています。
参考記事
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/whenspike
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/osgood-schlatter
http://kimamana.sakura.ne.jp/WP/overuse-missuse
【おすすめの本】
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“スポーツをする子供の「踵の痛み」 シーバー病その原因と対処方法” に対して1件のコメントがあります。